「お前じゃない」

うん…

「くやしいのは俺だ」

うん、俺よりくやしいのは
きっと先輩ですよね…





次に託す
 
 
 
 


試合に負けた
俺には真剣さが足りなかったことを
気付かされた試合だった

なさけなくて
くやしくて
泣いちゃいけないのに
涙が止まらない


「泣くな」

「すいません…」


ただ一点を見つめて
現実を受け入れようとしている先輩の姿は
涙をこらえているようにも見えて
くやしさを隠そうとせずに
こぶしを握り締めてる後姿が
酷く、苦しかった


「こんな所で終わるはずじゃなかった」

「はい…」

「でも、お前には次がある」

「え?」

「だから来年…絶対勝て」


その言葉に
体が震えた


「なんで…、なんでそんな事言うんですか!」


許されちゃいけないのに
全部俺のせいなのに


「なんで俺なんかにチャンスをくれるんですか!
 俺のせいで負けたのに!」


なのになんで、
そんな優しい言葉を…


「なんで…」


先輩はふと振り向き
俺の肩を力強く掴んで
言った


「次に託す」


震えだした俺の脚は
体を支えることが出来ずに折れた
喉が震えて、息が詰まって苦しい
溢れる涙を止める手段が見つからない


「泣くなっつっても泣くよな、お前って」

「すいませんっ…」

「次は勝てよ」


そう言った先輩の姿は痛くて眩しくて
目頭が熱くなった


そして彼のシャツを
力いっぱいに掴んで俺は


「勝ちます、絶対…!」


と誓って
先輩を睨んだ

 
 
 
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夏になると思い出します。
負けてばっかり(笑