ガラス細工を



壊してみたくなるのは

壊れる瞬間が綺麗だと知っているからなのか

ただ飽きただけなのか


「俺、好きな人ができた」

「あの子?」

「どの子だよ」

「髪の短い」

「そうそう、俺より短い」

「で、どうするの」

「落とす」

「そう」


余裕の笑みの理由は

俺が戻ってくると確信しているからだろうか


「じゃぁ、もう会えないわね」

「なんで?」

「会いたくないから」

「嫌だ」

「わがまま」

「知ってる」


でもそれを許して

俺を甘やかすのはあんただ


「好きにすればいいわ」


ほらね


「ねえ」

「何?」

「これ持って」


何の重みだろう

腕の上にのった物は重かった

手が動かせない

触れてきたものを

拒めない


「もうこんなことすんな」

「これが最後よ」

「行為が?」

「すべてが」


お互い知っている慣れた温度

離れがたいと思ってしまうその温度に触れた瞬間

予感がした

俺はやっぱりまたこの場所に

戻ってくるかもしれない


「嫌だ…」

「貴方ってほんと…」

「最低?」

「ええ」

「お互い様だろ」

「…そうね」


飽きたから壊す

それでも続く関係を

求めてるんだろう

結局は気を引きたいだけなんて

俺は何て子供っぽいんだ


でも、ガラス細工を壊すのは

ワクワクするんだ
 
 

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歪な愛の形もあったり。
いろんな人間がいます。